ジャパン・フードバンク・リンクの昨日・今日・明日 三日目

株式会社スターメンテナンスサポートは、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として売上の一部をフードバンクへ寄付しています。

本記事はフードバンクの取り組みを多くの方に知っていただくため、当社が寄付をしている一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンクの理事長である村井哲之氏に寄稿いただきました。(原稿を4分割しており本記事は3/4にあたります)

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絞り出した智慧が結実!!加盟団体数日本一で気付いた自らの真の役割とは

実はJFL設立当初一番心配していたことは、食糧・商品を寄贈・提供して頂いた方々には一切の責任を負わせないとか、特に、賞味期限さえ残っていれば引き取るとの核となるスタンスに対して、「衛生管理上の問題でそれはマズイ」などと農林水産省に言われるのではないかと言うことでした。しかしそれも杞憂に終わりました。現在岡山県では、ほぼ全てのスーパーやドラッグストア、またスーパー側から声を掛けて頂いたことから地元を中心とした食品メーカーにJFLに加盟を頂き、前述の『岡山モデル』がほぼ完成しました。

2019年の2月末の段階で加盟事業者数を振り返ってみると、全国ベースでは、

  • 食糧・商品提供事業者【食品スーパーを中心とした小売業等】…17社
  • 食糧・商品提供事業者【食品を中心とした製造メーカー等】……25社
  • 食糧・商品受領事業者【フードバンク、社会福祉協議会、雇用支援事業所、子ども食堂等】28団体

となっていました。合計すると70事業者です。

いつの間にか加盟している、食糧・商品の提供(寄贈)を受けフードバンク活動を推進する事業者の数だけでも、先発の2つの推進団体のそれを上回っていました。

この背景には、一切どこからもお金を頂く(寄附を受ける)ことなく、まず食品スーパーの廃棄の削減のど真ん中にフードバンク活動の推進を位置付けようとの強い想いの中で、現場で気付き考え出された新たな2つの‟目から鱗“の革新的な取り組み(事業展開モデル)がありました。

 

国も認めた『ハローズ方式』でフードバンク活動が廃棄の削減に直結

これまで、食品スーパーマーケットチェーンからフードバンクに食糧・商品が提供される場合、➀定期的に、スーパーの物流センターや主要店舗に集められたものをフードバンクが取りに行く➁スーパー側が定期的に「通い箱」を複数の店舗間で回し、それをフードバンクが終着店舗に回収に行くと言った方法が取られていました。一方、スーパー側からは、

  1. 月に1回程度では、思ったほど廃棄の削減に繋がらない
  2. 店舗現場から廃棄されるものの多くは、賞味期限が短い青果や、更に短い日配品なので、これが何とかならないか?!

との宿題を貰っていました。

こうした中、岡山のスーパーの幹部の方が新たに開発した寄贈される食糧・商品の集荷・配布の仕組みにより、この宿題の答えを出すことが出来、スーパーのフードバンク活動の推進をその核に据えた廃棄の最適化の流れに拍車が掛かって来ました。農林水産省もその革新性に注目し、『ハローズ方式』として同省のHPに命名・掲載をされており、ハローズ社は、今年の「第6回 食品産業もったいない大賞・農林水産省 食料産業局長賞」を受賞しました。


参考
第6回「食品産業もったいない大賞」の受賞者の決定及び表彰式・事例発表会の開催について農林水産省

『ハローズ方式』とは、
  • スーパーの店舗ごとに訪問するフードバンクの担当者を決め、店舗で発生する包装破れ品や陳列期限切れ商品、お客様が持ち帰るのを忘れて一定期間が経過した商品等を定期的に提供する。
  • フードバンクの担当者が受取先団体(要支援生活者施設)の割当てを決め(どこが、どのタイミングで引き取りに来るか)、割り当てられた団体が直接店舗に定期的に引き取りに行く。

というものです。

最小限のインフラで開始できることに加え、小口での提供や、野菜など消費期限の短い食品の提供にも対応できるといったメリットがあります。

実際に現場でおこったことは、『ハローズ方式』により、フードバンク側(その先の要支援生活者施設や子ども食堂を含む)に提供される食糧・商品の幅が広がったことと、結果としての量の大幅な拡大により、廃棄される食糧・商品の量が増大し、確実に廃棄物の量の削減を通じた廃棄コストの削減に繋がり始めたことです。

例えば、店舗から青果が定期的に出て来ることを確認したその店舗担当のB型雇用支援事業所の方々は、その後店長と回収のタイミングを個別に打ち合わせ、毎週月曜日に引き取りに行くようになりました。すると、売れ残ったまだ十分に食べられる野菜や果物に第二の命が与えられるようになったのです。また、毎日朝食を無料で子供たちに提供している子ども食堂は、24時間営業の店舗に対しては、前日の24時の時点でこれまで廃棄の決定をされ捨てられていた日配品を中心とする、あと24時間が賞味期限の食糧・商品を、毎朝午前5時過ぎに全量引き取って帰ります。

なぜなら、午前8時までには子ども食堂で調理をし、朝食を自宅では取れない子供たちに提供することで、全量の消費をするからです。日々提供される食糧・商品のケース数は月間で100ケースを遥かに超え、当該店舗における廃棄の総量の減少を通じた廃棄コストの削減に直結します。

A型雇用支援事業所が大活躍、精神疾患からの社会復帰支援団体もフードバンクに!?更にスーパー自らがフードバンクに!!

当初は、スーパーが食糧・商品を出してくれないと訴える旧来からのフードバンクに対して、責任の所在や賞味期限の問題等々を提供する側の立場に立って考えましょうと説得を試みてJFLの会員になってもらいました。ここに来て、スーパー側のフードバンクに対するなんとなくの気持ち悪い感もなくなり、厳しい利益環境の中『ハローズ方式』で取り組めれば、廃棄コストの削減に直結することが経営者にも確実に認識され始めました。

またJFLも、「いったい、そのフードバンクはどこにうちから提供した商品を届けるのか?要支援生活者と言うが支援の基準はきちんと決めて運営をしているのか?提供した商品の再販をしない保証はどこにあるのか?」と言って来るスーパーに対しては、「では、スーパー様自らがフードバンクを立ち上げればいいじゃないですか。立ち上げから運営までの指導の一切はJFLで引き受けますよ。」と言えるようになって来ました。言葉通り、徳島のスーパーには自らフードバンクを立ち上げて貰いました。

こうなると、スーパーが『ハローズ方式』を採用した場合のJFLであり、加盟している食糧・商品受領団体であるフードバンク側の仕事に、店舗ごとに引き取りが可能なフードバンク、社会福祉協議会、子ども食堂、雇用支援事業所、要支援生活者施設等を見つけ出してスーパーの各地の店舗とマッチング(お見合い)をさせることが加わって来ます。JFLにとっては、県や大きな都市ごとに食糧・商品の提供先を地道に開拓して来た実績と豊富な情報(どこが食糧・商品を欲しているか)を持った団体に加盟をして貰うことが必要になって来ました。なぜなら、こうした情報は活発な支援活動をしているところに集まり、自らの需要を満たすことだけを目的としていたり、その程度の活動に対して国の支援を求めていたりする所には入らないからです。

そうした中『岡山モデル』が確立できた背景には、『ハローズ方式』ともうひとつ、極めて高い機動力を持ち、食品ロス削減と要支援生活者支援をバランスよく実現しようとしていたA型雇用支援事業所が運営するフードバンクの存在が欠かせませんでした。現在、その活動範囲の拡がりと機動力、及び理念に共感頂いての事業推進力から、JFLの西日本事務局まで務めて貰っています。岡山及び周辺県のスーパーが全店舗で『ハローズ方式』で廃棄の削減に取り組みたいとなると、ここが、県内外の他のフードバンク、子ども食堂、社会福祉協議会、雇用支援事業所等々と連携して店舗ごとに引き取る要支援生活者施設を捜してきます。また、食品スーパーにフードバンクの運営主体になって貰う場合や、その他の事業者の方々がその立場を最大限に活かす形でフードバンクを立ち上げる際の指導も含めて、現在大活躍をして貰っています。

2つのモデルを創り出す過程で気付いた自らの真の役割とは

こうした状況下、2019年の2月に高松市と岡山市で開かれた(年に2回程度開かれる)農林水産省主催の「食品ロス、及び、リサイクルをめぐる情勢の情報交換会」は、高松会場の方は提供側、受領側を含めて参加事業者・団体数も少なく寂しかったようですが、岡山会場は、『岡山モデル』が成果を挙げていたことや、そのベースとなった『ハローズ方式』の発祥の地であったことから参加事業者・団体数も30を超え、活発な意見交換を含めて大変盛り上がりました。

そこでフードバンク側は、制限時間の3分を無視して如何に自分たちが頑張っているかのアピールを延々と続けました。スーパーや食品メーカーからもフードバンクに対して更なる機動力のアップと引き取り先の開拓の要望の声が上がる中、JFLはいつ、いかなる立場で喋らせられるのかを待っていました。司会者から耳打ちされる形で、JFLはフードロス削減・食による要支援生活者支援の世界のコーディネーターのトップランナーの立場ですから、最後に総括をして話して下さいと言われて、久々に目から鱗が落ちました。

振り返って見ると、当初は頭の固い、そのままのスタンスではスーパーから永遠に食糧・商品が提供されることはないフードバンクの頭を柔らかくし、理解・了解・賛同を頂いた上で加盟をしてもらおうとしていました。しかし、歴史あるフードバンクほど、そのスタンスを変えようとはしません。

そうしたことから、提供する側に対していくら社会貢献を声高に唱えても、彼らの利益に繋がらないことは長続きしない。提供者ファーストでやり切るしかないと腹を括り、理念を一にするフードバンクがない地域には該当の団体を見つけ出し、働きかけてフードバンクになって貰っていました。2年半の活動の間に、どういう団体がフードバンクになることで、その本来の目的を達成する力を同時に得ることが出来るのかもわかって来ていたからです。それは機動力をキーワードに、A型雇用支援事業者であり、常設の子ども食堂であり、スーパーそのものであり、新しいところでは精神障がい者の社会復帰支援団体です。

提供する側には、フードバンクの推進を如何なる活動の中にどう位置づけ、どのように推進をして行けば本質的な目的が達せられるのかの具体的なアドバイスを寄り添う形で行い、提供を受ける側には、どうしたら彼らが安心して継続的に、かつ、これまで廃棄をしていた食糧・商品を1kgでも多く提供してくれるかを説き、社会的な常識とビジネスセンスを提供することで両者を現場で結び付けて来ました。それもスーパーであれば店舗ごとに。

結果、司会者からフードバンク活動推進の「コーディネーター」として紹介をされたのです。食品ロスを減らすと言う我が国の大きな課題の中、食品メーカーやスーパーからこれまで捨てられていた食糧・商品を1kgでも多く出るような環境を整え、それらを1kgでも多く廃棄に回すことなく、要支援生活者に届けることが出来るフードバンクをネットワーク化し、時に設立・養成し、この両者を強く、固く信頼の縄で結び付ける(リンクさせる)コーディネーターNO.1として映っていたのです。そうした評価に意を強くして、最後に、JFLの理事長としてかなり刺激的な発言をしました

次回はこの発言とその源泉となったSDGs、今後のJFLについてお届けします。

 「SDGs」の拡がりと言う今世紀最大のBig Wave  ~得手に帆を揚げて!!~