今、大きな注目を集めている再生可能エネルギーにはさまざまな種類のものがあるのをご存知でしょうか。ソーラーパネルを使った太陽光発電、大きな風車を使った風力発電はよく知られていますが、ほかにはどんなものがあるのでしょうか。いろいろな種類の再生可能エネルギーとその仕組み、特徴を紹介するとともに、今後どのような展開を見せていくかについて予測・解説します。
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーは、「自然界に由来し、利用する以上の速度で補充をされて枯渇することの無いエネルギー」と定義されています。自然のさまざまな力を利用するため、自然エネルギーとも呼ばれています。
石油や石炭のような化石燃料が使ったら無くなる限りある資源に対して、再生可能エネルギーは基本的に無くなることがありません。また、化石燃料と異なり、地球規模の気候変動の原因とされる二酸化炭素を排出しないことも再生可能エネルギーの特徴です。
再生可能エネルギーの代表として、日本ではソーラーパネルを用いた太陽光発電が有名ですが、自然界に存在するエネルギーは多種多様で、さまざまな方法でそれらを取り出すことができます。また、一時的に大気中に二酸化炭素を放出しても、吸収のプロセスを伴うことで、ライフサイクルのなかで排出量をゼロにするカーボンオフセットという考え方のものまで再生可能エネルギーに含めるので、さらに種類は増えます。
日本では国が固定価格買取制度(FIT)を政策として導入し、高い買取価格を提示することで、各メーカーや個人、事業者へ参入を促したため、再生可能エネルギーの導入が増えました。
ただ、FITによる買取費用の一部は、賦課金として、電力を使用する国民が広く負担しています。2017年度の買取費用は約2兆7000億円、賦課金は約2兆1000億円にも上ります。そのため、環境にやさしい一方で、石油や石炭を使う火力発電などに比べて高価なエネルギーとなってしまっています。
しかし、海外ではヨーロッパを中心に再エネの発電コストが低下してきていることから、他の発電方法で発電された電力と比較して価格競争力が高まっており、再エネ普及に拍車をかけています。
太陽光発電と風力発電
太陽光発電
再生可能エネルギーのなかでも最も有名で代表的なものといえば、太陽光発電と風力発電でしょう。
太陽光発電はソーラーパネル(太陽電池)を使って、太陽の光を電気に変えるものです。半導体の光起電力という効果を利用しており、他の発電方法と異なりタービン発電機を用いないところが特徴的です。
諸外国に比べても日本では導入の比率が高く、再エネの代名詞となっています。太陽光発電長所は、導入コストが安価という点です。また、複雑な機構を持つ他の発電方式に比べると保守点検が容易で、適切なメンテナンスを行えば故障のリスクを抑えて長期間運転を行うことができます。そのため、1000キロワット以上のメガソーラーから住宅の屋根の上に設置する小型のものまで、さまざまな場所や規模のものが普及しています。
短所としては、発電量が日照量によって決まるため、夜間の発電はできませんし、天候の影響、季節差が大きいなど電力供給に安定性を欠く点があります。また、盗難被害や台風、水害による被害などのリスクが高い点もあげられます。
風力発電
風力発電は、風の力で風車を回転させることで発電を行います。風車が大きいほうが発電効率が高いことから大型化が進んでおり、1.5MWでローター径(羽根の描く円の直径)が約70m、2.5MWで約100mなどが現在主流になっています。
導入時のコストが高い一方で、長期的なコストパフォーマンスは太陽光発電よりも高いといわれています。また、昼夜を問わず発電ができ、立地の選定を正しく行えば比較的安定的に電力が供給できます。
短所は台風などの自然災害による故障のリスクがあることです。また、設置場所によって発電量が大きく異なるので事前の綿密な調査が必要になります。さらに、風車の大型化と騒音や景観破壊への懸念などから、適切な立地を選ぶ条件が厳しくなってきています。
日本の風土にあった再生可能エネルギーは?
再生可能エネルギーは自然の力を利用するものなので、国や地域の気候風土に適したものを選ぶことが求められます。日本の国土の特徴は豊かな水とコメ作りのための農業用水路が全国に張り巡らされていること。そして、火山国であり温泉資源に恵まれていることなどがあります。こうした風土を生かした再生可能エネルギーにはどのようなものがあるのでしょうか。
小水力発電
小水力発電は、ダムを建設せずに水路などを利用した出力が100KW以下の小規模な水力発電です。日本の農村は豊かな水に恵まれ、農業用水路が整備されているので、小水力発電の適地が多くあります。ただし、季節によって水量が変化することや、高い導入コストに見合った発電量が期待できるかなどハードルが多いのが実情です。農業団体や土地改良団体などが持つ水利権にまつわる交渉も大きなハードルになっています。
地熱発電
地熱発電は火山活動による地熱を発電に利用します。日本は世界有数の火山国で全国に温泉があります。日本ならではの特性を活用した発電といえます。しかし、適地の多くが開発に制限のある国立公園内であったり、旅館組合や観光団体の反対があったりと導入に向けて課題があります。
木質バイオマス発電
木質バイオマス発電は森林の間伐材などを燃料にした発電です。木材を燃やすので、一見大気中の二酸化炭素が増えるように見えますが、森林が二酸化炭素を吸収して木が育つことで排出量がプラスマイナスゼロの循環ができます。これをカーボンオフセットと呼び、温室効果ガス削減になります。
日本は国土の大半を山林で占められており、全国に人が管理する人工林が存在します。材木価格の下落などで疲弊した林業の収入源としても期待されています。林業が盛んになり森林の管理が適切に行われることで、森林荒廃による地崩れや洪水を防ぐ効果も期待されています。
一方、ヨーロッパと比べると日本の山林は地形が急峻なため、木材の伐採、運搬の機械化が困難で、人手に頼るために高コストになっています。また、林業はいわゆる3K職場のため後継者不足も深刻です。バイオマス発電への原料安定供給のためには、インフラの整備などの支援で林業を立て直すことが必要となっています。
ますます増えていく再エネ
再生可能エネルギーは、原則として燃料を必要とせず、そのためランニングコストが非常に低いのが特徴です。化石資源、輸入資源に頼らないので、国際的な資源価格の変動に左右されることがなく、海外の事件や事故の影響も受けない、地産地消のエネルギー源としてさまざまな補助を得て導入が進んでいます。
自然に影響されるので供給が不安定というイメージが根強くあります。しかし、例えば、余った電気でダムに水を汲み上げ、足りないときに水力発電を行う揚水発電所の活用など、さまざまな安定化の方法があります。将来的にはリチウム蓄電池や水素ステーションなども再エネの安定化に使うことができると考えられています。実際に、海外では再エネの高い導入率のもとで供給の安定性を実現している事例もあります。
ただし、再エネの本格普及には、FITの値下げなどで発電・導入にかかるコストをできるだけ低減させて国民の負担を抑制していくことが必要です。日本では再エネの発電コストは高止まりしていますが、上述したように海外では大きく下がってきています。こうした海外の事例に学びつつコスト減への取り組みを推進することで、再エネの拡大が進むと考えられます。
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