毎月金額が少しずつ違う電気代。勿論、消費する電力量によって金額が増えたり減ったりしますが、それ以外にも料金が上下する仕組みがあるのをご存知ですか? 発電に使う燃料の90%近くを輸入に頼る日本では、石油、石炭、液化天然ガスの国際価格が電気代に影響を与えています。ジェット燃料の国際価格で飛行機代が変動するのと同じです。今回は燃料費調整額の仕組みをご紹介します。
日本のエネルギー事情
まず日本のエネルギー供給状況は、どのようになっているのでしょうか。日本のエネルギー自給率は、1960年は石炭や水力など国内の天然資源により58.1%だったのが、2015年には7.0%に落ち込んでいます。発電の為のエネルギー源、つまり電力源としては、2014年は石油が10.6%、石炭が31.0%、液化ガスが46.2%と、電力源の88%を輸入に頼っています。
これらの化石燃料の国際市場価格は世界の需給バランスや国際情勢により変動しますから、日本のエネルギー価格は国際価格に連動して上下します。実際に、資源の国際価格上昇によって日本の電気料金も上がったのですが、2010年から国際原油価格が下落する2014年までの間、家庭向け電気料金は約25%、産業向けは約39%とその上昇は続きました。
燃料費調整制度とは
電力会社にとって商品代となる電気代は、発電や送電、売電にかかるさまざまなコストを基に決められますが、電気代の改定にあたっては、政府に届け出をして認可を受けるといった行政手続きが必要であることを電気事業法で決められています。つまり、一般消費者や企業への影響が大きい電気料金については、そう簡単に改定できない仕組みとなっています。しかし発電に使われる燃料費はコストの約42%を占め、輸入燃料の国際価格の上下は電力会社にとっては大きな負担であり、電力の安定供給に影響が出かねません。
これを是正するため、発電・売電事業者が、輸入燃料の国際価格変動の影響で経営に支障をきたすことなく電力を安定供給できるように、燃料費調整制度が平成8年から導入されました。燃料費調整制度は、石油、石炭、液化天然ガス(LNG)燃料の輸入価格および為替の影響を電気代に反映させるもので、国内資源である水力発電や再生可能エネルギーによる発電には適用されません。ただし現在、日本では水力発電は9%、再生可能エネルギーは3.2%ですから、電気代のほとんどは燃料費調整制度の対象となります。燃料費調整制度では、電気代は上昇するだけでなく、燃料の国際価格が下がればそれに応じて下がる仕組みとなっています。
燃料費調整額の算出方法
では燃料費調整額は、どのように算出されるのでしょうか。燃料費調整額は、通常の電気代に輸入燃料の国際価格や為替の変動を考慮した金額をプラスもしくはマイナスするもので、電力会社の請求書にその単価が毎月記載されます。燃料費調整額の単価は電力会社ごとに決められ、各社の公式サイトで公表されます。実際に支払う燃料費調整額は、この単価に電気使用量をかけたものとなります。
燃料費調整額の計算方法
電気代は、(1)基本料金(2)電力量料金(3)再生可能エネルギー発電促進賦課金で構成されていますが、燃料費調整額は(2)に含まれます。通常の電力量単価に消費電力量を掛けたものに、燃料費調整単価に消費電力を掛けたものが加算または減額されることになり、以下の3要素を基に計算されます。
(A)基準燃料価格:各電力会社ごとに、燃料仕入れ価格の見込みで設定されます。各電力会社の電気料金改定認可申請日前の3ヶ月の平均燃料価格で、改定されるまで変わりません。
(B)基準単価:平均燃料価格の実績が1klあたり1,000円変動した場合の単価で、電力会社が高圧契約、低圧契約ごとに設定します。これも料金が改定されるまで変わりません。
(C)平均燃料価格:輸入統計を基に算出する、燃料輸入円建て価格の3ヶ月の平均値です。電力会社により、原油、石炭、LNG使用割合は違うため、割合や熱量に応じて換算係数を設定して平均燃料価格を出しています。電力会社によって異なるこの係数は、価格改定時に申請・認可されます。
上記の要素を使って、燃料費調整額は以下の計算式で算出されます。
燃料費調整額 = (C平均燃料価格 - A基礎燃料価格)×B単価÷1000
なお調整される料金には、基準時のプラス50%までという上限が設けられていますが、下限は設けられていません。
燃料費調整額の算出期間
燃料の国際価格の急激で大幅な変動により、燃料価格の変動の電気料金への反映を早くする必要から、2009年に燃料費調整制度が見直されて算出方法が変わり、貿易統計から出す2ヶ月前までの3ヶ月の平均輸入燃料価格を毎月反映するようになりました。従来は3ヶ月前までの3ヶ月間の輸入価格の平均値を3ヶ月間適用していましたから、調整費は従来3ヶ月ごとに見直されていたのが、毎月変わることになったわけです。(参考:原燃料費調整制度の見直しについて | 経済産業省資源エネルギー庁)
電気代を通して国際情勢に敏感になる
電気の使用量が特に増えたとは思えないのに料金が上がっていたり、いつもより使っているはずなのに料金が下がっていたりする場合は、燃料費調整額の影響を受けていることが考えられます。電気代請求書の明細をチェックすることで、国際情勢に影響される燃料の国際価格の変動を意識してみませんか。
関連記事【2018年11月】電気料金に影響する賦課金等はどれだけ上がった?
参考:
- 日本が抱えているエネルギー問題|資源エネルギー庁