これまでのデマンドピークは夏、しかし今後は冬!?
2022年6月7日、経済産業省は5年ぶりとなる「電力需給に関する検討会合」を開催しました。2022年度は1月、2月に7エリア(東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州)で安定供給に必要な予備率3%を確保できず、東京エリアはマイナスの予備率とされています。これは2012年度以降最も厳しい見通しです。
予備率とは?
資源エネルギー庁によると、以下のように定義されています。
電力の予備率とは、電力需要に対して供給余力の余裕がどの程度あるかを示したものです。 電力の需要は3%程度のぶれがあることから、安定供給には予備率3%が最低限必要とされています。
電力需給状況|資源エネルギー庁
通常電力使用量や最大電力は夏に多くなる傾向にあります。弊社がお客様の省エネ省コストのお手伝いをする際も、夏のデマンドピーク対策がメインです。
しかし今後は、冬の電気使用にも警戒する必要があります。
もちろん省エネは365日24時間取り組むことができればベストですが、事業活動との兼ね合いを考えるとそれは難しいと思います。現状を知りポイントを絞って、来る冬に備えましょう!
なぜ?逼迫の背景
経済産業省によると、過去2年間、10年に一度の猛暑・厳寒を想定した最大電力需要を実際の需要が上回るケースが増加しています。特に冬季は、10エリア中2020年度に7エリア、2021年度に4エリアで想定最大電力需要を上回りました。
何故このような状況になっているのでしょうか。
・コロナ禍による生活様式の変容
今やテレワークは当たり前となり、その分電気を使用する場所が増えました。コロナ禍当初に事業を停止していた企業が事業を再開し始めたことも要因と考えられます。
また従来の省エネ手法である“シェア”が、密回避のために実施しづらくなっています。共通スペースに集まり光熱費を削減する「クールシェア」「ウォームシェア」がその一例です。
・猛暑、厳冬
猛暑に関しては、地球温暖化やヒートアイランド現象などの気候変動が原因とされています。この冬はというと、東・西日本において気温は平年並みか低く、降水量と降雪量は平年並みか多いと気象庁が予報しています。寒さが厳しくなれば当然暖房設備の電力需要が高まります。
・原子力発電所再稼働の遅れ
2022年9月13日の時点では、日本で再稼働している原子力発電所は10基。そのうち4基は停止中です。電力の安定供給に向けて原子力発電所の再稼働は欠かせませんが、地元住民の反対やテロ対策など、問題は山積みです。
・燃料費高騰による火力発電の制限
ロシア、ウクライナ情勢の影響で燃料費が高騰しているのは周知の事実です。そして今後も燃料の調達リスクが増すことを政府も懸念しています。十分な燃料を確保できない場合、火力発電が稼働できない可能性があります。
このように増加傾向にある需要に対して供給が間に合わず、電力需給の逼迫に繋がっています。
政府の対策
政府は(1)供給(2)需要(3)構造的の3つに分けて対策を打ち出しています。
(1)供給対策
○電源募集(kW公募)の実施
○追加的な燃料調達募集(kWh公募)の実施
○発電所の計画外停止の未然防止等の要請
○非化石電源の最大限の活用
○小売電気事業者に対する供給力の確保等の要請
○電力広域的運営推進機関によるkW、kWhモニタリングの実施
○供給命令等による安定供給の確保
(2)需要対策
○節電・省エネキャンペーンの推進
○産業界や自治体と連携した節電対策体制の構築
○対価支払型のDR(ディマンド・リスポンス)の普及拡大
○節電要請の高度化
○使用制限令の検討とセーフティネットとしての計画停電の準備
(3)構造的対策
○容量市場の着実な運用と災害等に備えた予備電源の確保
○燃料の調達・管理の強化
○新規投資促進策の具体化
○揚水発電の維持・強化、蓄電池等の分散型電源の活用、地域間連系線の整備
需要家の対策
国の対策を待つのではなく、需要家自ら対策をする必要もあります。
●電力の見える化
今どのような電気の使い方をしているか把握していますか?事業内容や営業時間・勤務形態などによって電気の使い方は様々です。対策を打つには、現状とその問題点を知る必要があります。
●省エネによる電力需要低減
現状を把握したうえで、無理なく続けられる省エネをしましょう。省エネと一言に言ってもその手法は様々ありますが、こちらも業種などによって有効なものは変わってきます。具体的内容については是非弊社にお問い合わせください。シミュレーションを実施し、適切なご提案、お手伝いをさせていただきます。
●非常用発電機、蓄電池による備え
電力の需給バランスが崩れると、大規模停電が起こる可能性があります。それは最悪のケースですが、政府の対策にも「○使用制限令の検討とセーフティネットとしての計画停電の準備」とあるように、電気が供給されない状況が想定されます。非常用発電機や蓄電池の導入を検討してみましょう。
省エネやBCP対策について「今はいい」「そこまで手が回らない」と仰るお客様もいらっしゃいます。しかし「今」動かなければ、事業そのものが続けられない可能性があります。エネルギー危機のさ中である「今」を乗り越え、明るい「未来」を一緒に創りましょう!
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参考
2022年度の電力需給に関する総合対策を決定しました|経済産業省
冬の天候の見通し|気象庁