ニュースで話題の「働き方改革」。労働人口の減少・育児や介護との両立の必要性向上により、労働時間は短縮化していく流れの中にあります。
昔のように仕事に人生の大部分の時間を費やすような働き方を志向する人は減ってきているので、より柔軟な働き方を可能にして、優秀な人材の流出や労働効率をあげる仕組みが必要になってきています。
こうした背景の中でも、大企業はもちろん、相対的に労働者数が少ない中小企業でさえ、働き方の多様性を労働者全体に理解してもらうことは難しいと予想できます。
さらには労働時間が短縮されることで、特に中小企業は今までの仕事量を保つことが難しくなることも懸念されます。
それでは、中小企業ではどのように働き方改革を推進していけば良いのでしょうか。
本記事では、多様な働き方の例として「時短勤務」「モバイルワーク」について取り上げ、これらを導入して多様な働き方を実現するためにどのような点に留意すればいいのか、そのポイントについて解説していきます。
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モバイルワーク・時短勤務とは?
モバイルワークとは、ICT(情報通信技術)を活用した柔軟な働き方である「テレワーク」の一種で、中でも時間や場所の制限のない働き方を指します。
つまり、インターネットやパソコン、スマートフォンなどを利用することで、職場にいなくても、外出先や自宅、サテライトオフィス(遠隔勤務用施設)などで変わらず仕事ができるような仕事の仕方です。
テレワークの導入企業においては、従業員の増加率が高い傾向にあります。
「2017年版 情報通信白書」によると、テレワーク導入企業は「社内事務の迅速化」や「社員の通勤・移動時間の短縮」など、生産性向上を目的に制度を導入しています。このうち、8割以上が生産性向上に効果があったと回答しています。
一方で時短勤務とは、その名の通り勤務時間を短縮して働くことを指します。
改正育児・介護休業法により規定されており、主に出産・子育て中の男女や親族の介護に従事する労働者に対して、本来の勤務時間より短い時間での労働できるようする仕組みです。
導入時に気をつけること①:モバイルワーク・時短勤務の制度”のみ”を導入してはいけない
モバイルワークや時短勤務を導入する際に、「モバイルワークや時短勤務の制度のみを導入」してしまい、その他の従来の制度が既存のままになってしまうことがあります。
働き方が変わるということは、それに付随する仕組みの転換も伴います。
例えば、テレワークの制度を導入して従業員に自宅での勤務を許可した場合、勤怠管理・タイムカード・打刻情報の管理方法を変更する必要があるかもしれませんし、今まで行なっていた会議・ミーティングの予定を変更したり、会議の開催頻度・方法を変更せざるを得ない場合もあります。
会社に滞在している時間での管理ではなくなるので、報酬の制度も見直す必要が出てくるかもしれません。
そのほかにも、顧客情報などのセキュリティ情報の扱いを整備したり、自宅で勤務する人をどのように評価するか、人事制度の改善も必要になってきます。
このように、働き方を柔軟にするということは、人事制度、ひいては企業の情報管理も含めた改革をすることと同義だと言えます。
安易に制度だけを導入することなく、導入したい制度によって自社のルールや仕組みをどのように改善しなければならないのか検討した上で、段階的に行うことが必要になります。
導入時に気をつけること②:目的に合わせて導入する制度や仕組みを選択する
「働き方の多様化を認めること」はあくまで手段であり、目的ではない、ということを把握する必要があります。
働き方改革において企業が目指すべきゴールは、働き方を多様にすることではありません。働き方の多様化は、あくまで「手段」です。
目指すべきところは、企業によって異なります。ある企業においては、「労働生産性を向上させること」が目的かもしれませんし、別の企業にとっては「優秀な人材に自社で長期的に働いてもらうようにすること」が目標かもしれません。
例えば、労働生産性を向上させたいのであれば、できるだけ無駄な時間をカットするという手段が非常に有効です。このために全社的にテレワークを導入する、という決定は非常に合理的だと言えます。
一方、大多数の従業員が徒歩圏内に住むような職場において、労働生産性の向上を目的にテレワークを導入する、というのは効果が出にくいと言えるでしょう。
目的と手段を明確に分けて、自社の状況や社員の特性に合った施策を採用することをおすすめします。
導入時に気をつけること③:制度を導入したあとは、効果を測って改善する
他社の成功事例を導入するなどして働き方を多様化したはいいものの、現場レベルではその制度が合っていなかった、ということは大いにあり得ます。
制度を導入しても、その適用範囲が適切でなかったり、その他の既存の制度とうまく連携できていない、という事態が発生する可能性があるからです。
例えば、時短制度を法制度上該当する社員にのみ認める時短勤務制度を導入したとします。
該当する社員の働きやすさはもちろん向上しますが、時短勤務の対象ではないものの家庭の事情により時短勤務を強く希望している社員がいた場合、労働者の意欲を削ぐ結果となってしまう可能性があります。
時短勤務者に関しては、同じ部署やチームのメンバーによるフォローがどうしても必要になります。仕事の負担やその不公平性に他の社員が不満を持ってしまうという事例も多く、この場合社内の人間関係に影響が出てしまうかもしれません。
制度の効果は企業の環境や社員の性質によっても異なりますので、他社で効果のあった事例を導入するのはもちろん有効だと言えますが、その後の効果測定や改善活動は怠らないようにしましょう。
モバイルワーク・時短勤務の目的を明確にした上で、段階的に導入・改善しましょう
本記事では、モバイルワークや時短勤務について説明しながら、これらを導入するにはどのような点に留意すればいいか、具体例も交えながら紹介してきました。
まずは、自社への導入目的を明確化した上で、その目的にあった手法としてモバイルワークや時短勤務を段階的に試していくことが重要になります。その上で、経過を見守りながら、継続的に効果を測定・改善活動していくことが必要だといえるでしょう。
他社の事例を参考にしつつ、自社に最も適した形で多様な働き方を実現していきましょう。
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