ナレッジマネジメントは眠る資産の見える化
ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、たとえばベテラン職人が経験値によって培った技術や社内の部署別で保有する情報をすべての従業員で活用できる知識の形に整えることを指します。
職人の技術は、長年の経験の積み重ねによって匠とも呼ばれる繊細な加工や工程を実現し、精密機器の分野を支えているものも少なくありません。しかしそうした暗黙知を継承する若手技術者の育成にも同様の長い時間を要することとなり、その過程も容易ではありません。眠る資産でもある暗黙知を「見える化」する取り組みとしてもナレッジマネジメントの活用はあらためて注目されています。企業の成長を支え、問題を解決に導くツールのひとつです。
適切な生産性向上を支えるために
世界市場の激しい競争の中で、生産性向上、コスト削減、への流れもより一層強くなっています。海外での人件費も軒並み成長しており、いずれ国内での製造コストを上回る時期が来ると予測されています。ただコスト削減をするだけでは生産性の向上にはつながりません。コスト削減に焦ナレッジマネジメントで中小企業の暗黙知を資産にるあまり安全に不備があっては、最悪の場合災害にもつながります。そうなってしまえば削減はおろか大きなマイナスにさえなりかねません。危機管理の観点からも適切な生産性向上にすみやかに取り組むことが先決です。信頼性の高い製品を効率よく製造する、あるいは工期を遵守できる適切な工程を標準化する、など良質な要素を合わせて行わないことには生産性向上はなしえません。そのためにも現時点で社内の個人による暗黙知は誰もが見える仕組みやプロセスにする必要があり、適切な生産性向上の効果は計り知れないものがあります。
顧客の時間を奪うなかれ
アナログの知識の中にも多くの暗黙知があり、新人や異動によってのみ継承されてきた知識などのノウハウをロボティクスや話題のAIを導入すると社内で活用しながら成長する資産となっていきます。一例ですが、担当者のみで情報を抱えていると不在時に他の社員が対応できない、という事態も起こり得ます。共有できるデータとして保管されていれば担当者でなくても進捗などの状況がわかり、顧客からの問い合わせや要請に迅速に対応できます。わずかな待ち時間でも顧客にとっては大きな損失を招く場合もあります。クレームに発展すれば大きな痛手ともなります。顧客対応のスピードアップは最優先すべき課題のひとつです。顧客にとって信頼できる企業であることは大前提です。中小企業では対応が遅れがちと言われているデジタル化には助成金も活用できるので臆することなく先進技術を取り入れ、中小企業だからこそ業務の効率化を促進させましょう。
AI/IoTを活用し事業を円滑に
中小企業ではデータの活用やRPAなどのシステム導入はなかなか積極的にはすすんでいない実情がありますが、それまで築き上げた情報からなる資産を次世代へつなぎ、さらに成長させるためにはデータ化して活用しないことには不可能です。事業を成長させるには技術や情報の暗黙知をデータにして継承すべきことが不可欠であると先に述べました。しかしシステムの導入やデータの管理というと難しいのではないか、高額な導入コストがかかるのではないか、という懸念からデジタル化をためらう経営者の方も少なくないでしょう。しかし業務をデータ管理することで、担当者が単純な作業に拘束される時間はまず大きく削減できます。日々の業務の中に伝票など帳票の単純な作業はありませんか?
データ入力であれば、システムを導入すると概ね3割以上の作業時間削減を可能にしています。また、工程進捗の確認もシステムを利用した管理で案件別にすべての工程を一元管理できます。それまで担当者別で管理されていた情報もこうしたシステムを導入することによって他の担当者でも代わりにチェックしやすくなります。そして担当者だけが抱え込んで状況がわからなくなるのを防ぎ、問題があれば早期に気づくことにもなります。猥雑な事務処理を簡単に、かつミスや漏れを減らすことにも貢献します。品質向上にも効果があると言えます。また、システムの導入で従業員はより生産性の高い業務に集中して取り組めるため利益の向上、会社の成長も期待できます。
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中小企業庁による経営サポートも最大限に有効活用
生産性向上や効率化、そして働き方改革、と経営者には頭が痛くなるようなテーマかもしれませんが、生産性向上特別措置法による支援を活用し、苦手意識を持たずに取り組んでいくといいでしょう。適切な生産性向上に取り組むと、作業コスト削減だけではなく省エネの効果も高まるため会社の社会的貢献度にもプラスになります。導入費用や導入後の人材育成についても専門家のコンサルティングであれば予算や状況に応じた導入方法の提案が可能です。働き方改革法案の成立によって中小企業こそ生産性向上でビジネス貢献度を高めることが求められています。
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参考: