「RE100」とは?中小企業が知るべき近年の取り組みと動向

RE100とは

RE100という国際イニシアチブを知っていますか。RE100とは、100%再生可能エネルギーを利用して会社事業の運営を行うことを目標に掲げる企業が集まる、国際的な取り組みのことです。「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって「RE100」と命名されました。

2014年に発足したRE100には、世界全体で154社が加盟しています(2018年11月5日時点)。この中には、イオンや富士通といった日本を代表する企業や、インターネットの世界シェアトップのグーグル(アメリカ)、家具の世界最大手で知られるイケア(スウェーデン)や、食品世界大手ネスレ(スイス)など、日本でもよく知られている世界的な企業が集まっています。

また、近年では欧米企業だけでなく、中国やインドといったアジアの企業も、RE100に参画するに至っています。

 

RE100が誕生した経緯

RE100は、国際環境NGO「The Climate Group」が主導し、当時のイギリスのブレア首相の支援のもと、2014年に始まりました。

The Climate Groupは現在、イギリスのロンドンに本部が設立されています。また、アメリカ(ニューヨーク)、インド(ニューデリー)、中国(北京)、そして香港に支部を置いています。

The Climate GroupによるRE100プロジェクトが始まった背景には、地球規模での地球温暖化や異常気象の増加があります。これから先の未来に、国際的な枠組みの中での気候変動への対策が必要不可欠であると言えるでしょう。

こうした背景から、RE100は世界各地の企業に持続可能で環境に優しい再生可能エネルギーの利用を促し、二酸化炭素その排出量を減らすことで、企業の事業活動によって生じる地球への環境負荷を少しでも低減させることを目的としています。

RE100の活動の1つとしては、The Climate Groupが国連総会の時期である毎年9月に開催している年次報告会「Climate Week NYC」があり、RE100の活動の成果もこちらの報告会で発表されています。同時に、新たに企業がRE100への参加を表明する場所にもなっています。

 

RE100に参加するには

RE100に企業が参加する場合、参加に必要な2つの条件を満たす必要があります。
参加に必要な条件は、下記の2つです。
・ 再生可能エネルギー100%に向けた宣言を行うこと
・ 毎年の報告書提出を行うこと

RE100への参加に必要な条件1:再生可能エネルギー100%に向けた宣言

企業がRE100に参加するには、事業運営の100%を再生可能エネルギーで行うことを宣言する必要があります。多くの企業は、この宣言をするとともに100%達成をいつまでに行うか宣言しています。

ただし、この達成は簡単ではないのが現状です。なぜなら、世界各地に支社や事業所がある企業の場合は、その全ての支部をもって100%の目標を達成しなければならない制約があるからです。
また、RE100プロジェクトにおける再生可能エネルギーは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスに限定され、原子力は含まれないものとなっています。エネルギーの種別が制限されることで、実現の難易度がやや高いとも言えます。

100%達成の具体的な方法は2つあります。1つは「自己発電」で、もう1つは「市場から購入」です。

自己発電は文字通り自社内で再生可能エネルギーを発電して企業運営に利用することです。この場合、発電された電力の消費は、電力系統に連系されたものでも、そうでないものでも構いません。

市場から再生可能エネルギーによって発電された電力を購入する場合、PPAと呼ばれる再生可能エネルギー発電所と電力購入の契約を行うほか、電力事業者とのグリーン電力商品の契約や、グリーン電力証書の購入のいずれの方法でも可能です。

RE100への参加に必要な条件2:毎年の報告書提出

RE100の加盟企業は、「CDP気候変動」の質問票のフォーマットで報告書を作成し、プロジェクトの進捗状況をRE100事務局に毎年提出する必要があります。
報告書に記載する情報(再生可能エネルギーによる電力発電や事業における消費など)は、第三者監査を受けなければ記載することができません。

また、RE100のホームページや年次報告書の中で、こうした情報は公開されることになります。

 

RE100に参加している企業の業界と種類

RE100に参加している全企業の業界を見ると、金融、IT、製造、食品関係が多くなっています。そのほかに、医薬品、小売、建設、通信、ロジスティクスなどが加わり、全体としては既に非常に幅広い業界から企業が集まり、プロジェクトに参加している状況です。

このうち、日本企業を業界別に見ると、金融業が「城南信用金庫」の1社のみで、またIT業界は今のところ1社も存在せず、これらの分野では世界から遅れをとっている印象です。

日本企業の参加が目立つのは製造業で、「ソニー」、「リコー」、「富士通」、そして「エンビプロ・ホールディングス」の4社があります。

その他、小売業で「イオン」と「マルイグループ」、建設業で「積水ハウス」と「大和ハウス工業」のほか、その他の業界では「アクスル」や「ワタミ」といった企業もRE100に参加しており、いずれも日本においては大手企業に含まれる会社です。

日本企業では現在、大手企業の一部が参加しているRE100の気候変動対策への取り組みですが、今後中小企業にも関わりが大きくなっていくことが確実です。なぜなら、RE100では「サプライチェーン全体への責任」が問われているためです。大手企業は今後、自社の取引先、仕入れ先といったステークホルダーにも同じような気候変動対策を求めていく可能性が高いでしょう。そうなると、中小企業にとってもこうした取り組みの必要性は今後無視できないものとなっていくことが予想されます。

 

RE100の国別動向

RE100に参加している企業を国別で見ると、現在はアメリカが最多となっており、全体の3分の1を占めています。次いで、RE100の発端となったイギリスを筆頭に、フランスやドイツ、オランダ、スイスや、北欧などのヨーロッパ企業が続きます。
アジアでは日本のほか、中国、台湾、シンガポール、インドなどの企業が参加していますが、欧米企業と比べるとその数はまだまだ少数です。

 

RE100に参加している企業の取り組み事例

RE100の取り組み事例を紹介すると、やはり先んじているのは欧米企業です。

一例ですが、デンマークの飲料大手「カールスバーグ」は、同社がスウェーデンに構えるファルケンベリ醸造所における事業運営を既に100%バイオバス由来エネルギーにて調達しています。

一方日本においては、まだ目標に掲げる段階に留まっていますが、これからの実現が期待できる企業も多くあります。

例えば通販大手の「アスクル」は、中間目標として2025年までに本社と物流センターでの再生エネルギー利用率を100%にするとしています。さらに先の目標としては、2030年までに子会社を含めたグループ全体での再生エネルギー利用率を100%にすると宣言しています。

小売大手の「イオン」も、2050年までに店舗での二酸化炭素排出量をゼロにする目標と掲げており、今後はこうした大手企業を中心に、そして着々と中小企業においても、事業運営の再生可能エネルギー化が着々と進んでいくことが期待されます。

 

まだ日本、特に中小企業においてはあまり知名度のないRE100ですが、本記事で述べたように続々と導入する企業は増えています。今後は中小企業においても、CSRとしての取り組みや取引先からの要望として、RE100を踏まえたエネルギー利用を検討する必要があるかもしれません。
まずはこのような取り組みについて知り、自分の企業ではどのように導入できるかを考えていくのが良いでしょう。