株式会社スターメンテナンスサポートは、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として売上の一部をフードバンクへ寄付しています。
本記事はフードバンクの取り組みを多くの方に知っていただくため、当社が寄付をしている一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンクの理事長である村井哲之氏に寄稿いただきました。(原稿を4分割しており本記事は4/4にあたります)
「SDGs」の拡がりと言う今世紀最大のBig Wave ~得手に帆を揚げて!!~
前回話しました、JFLの理事長としてしたかなり刺激的な発言の続きです。
その内容は、ここまで書いて来たJFLの昨日・今日を簡潔に話した最後に、
「今日では、スーパーの社長にフードバンク活動推進を説得することは、JFLにとって極めて簡単になりました。これまではオーバーストアの状況下、本業である「物を仕入れて売る」形でもはや利益が出なくなっている中、廃棄コストを減らすべく、まず店舗におけるあらゆるものの廃棄率を削減しましょう。そして、どうしても廃棄に回さざるを得ないものは『ハローズ方式』を採用して、1kgでも多くフードバンクに提供をしましょう。結果それは廃棄コストの削減に繋がり、店舗の収益を増やします。…この流れで全く以て出来るようになりました。ですので残る課題は、スーパーの各店舗に、店舗が望むタイミングと回数で第二の命を与えられる可能性を持った食糧・商品を引き取りに行くことが出来るフードバンク(その先の要支援先団体)づくり(発掘)です。皆さん、機動力を付けて下さい。アンテナを張って下さい。そして、スーパーの店舗の周りで真に支援を必要としている施設の方々を捜し出して下さい」
というものでした。
そして最後の最後に、「しかし、明日からは、食品ロス削減と食による要支援生活者支援に対してスーパーの社長を説得する必要はなくなりました。なぜなら、そうした取り組みの上位概念(推進の核となる考え方)である『SDGs』の考え方が、今まさに企業にスピードを持って浸透し始めたからです。「社長、17のGoal全てに対応すべく総花的に取り組みを始めるのではなく、SDGsの12番目のGoalである『つくる責任つかう責任』への取り組みから始めましょう。」「まず、廃棄率の低減に全社・全店を挙げて取り組み、どうしても廃棄に回るものを『ハローズ方式』を採用し、機動力と情報力を兼ね備えた地元のフードバンクと二人三脚でそれらに第二の命を与え、結果、廃棄に関するコストを最小化する。企業収益に結び付いてこその「SDGs」への取り組みです。」こう言えば、もはや説得の必要は無くなりました」と伝えました。
聞いていた情報交換会参加者の半分以上が「SDGs」って何?と言った顔をしていました。しかし一般のビジネスマンの認知度が10%以下であることを考えると、会場の半分の方々にこれまでの一連の取り組みをSDGsの中に明確に位置付ける価値がなんとなくでも伝わったのなら「善し」との思いを持って話を終えました。
もうひとつ、ここまではっきりと言い切ることが出来る伏線が、2018年の夏にありました。SDGs未来都市を早くから宣言していた東海地区の県にある都市を営業の基盤とする地元大手の食品スーパーマーケットの社長から私宛に、「これからは、これまでの収益最大化ソリューションだけでなく、それらをSDGsへの取り組みの推進の中に明確に位置づけたコンサルティングをお願いします。」とのメールが届いたのです。当時は、正直、SDGsって聞いたことはあるけど、具体的には何から始めたら…と言った状況でした。
考えれば考えるほど、JFLの活動<「SDGs」であり、食品廃棄物の排出削減への取り組みが、何と「SDGs」の14項目の達成に繋がることを知り、驚く!!
SDGs未来都市のスーパーの社長から一本のメールが届いて以降、各地で開かれるSDGs関連セミナーに顔を出し、アマゾンで本と「SDGsバッジ」を買い漁り、早くからSDGs経営を実践し、会社のビジョンを再構築する中で事業であり、企業の持続可能性を担保している経営者との幸運な出会いもあり、結果として極めて短期間に「SDGs」なるものの本質を核心的・確信的・革新的に捉えることが出来ました。
こうしてコンサルティングと言うか、SDGsをツールとした企業のビジョンでありフィロソフィーの構築ソリューションが出来るレベルに達する段階で見えて来たものがあります。それは廃棄される食糧を日本中からなくす取り組みを徹底して行うことは、結果として以下の、何と14項目ものSDGsのGoalに繋がると言うことです。まさに、ひとつの課題を徹底的に改善できる国(企業)は、その他の如何なる課題も解決できる!!つまり、“一点突破 全面展開”に今更ながら気が付いたのでした。
【2】飢餓をゼロに
【3】 すべての人に健康と福祉を
【4】 質の高い教育をみんなに
【7】 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
【8】 働きがいも経済成長も
【9】 産業と技術革新の基礎をつくろう
【10】人や国の不平等をなくそう
【11】住み続けられるまちづくりを
【12】つくる責任つかう責任
【13】気候変動に具体的な対策を
【14】海の豊かさを守ろう
【15】陸の豊かさも守ろう
【17】パートナーシップで目標を達成しよう
スーパーや食品メーカーの経営者に対して、SDGsの17のGoalひとつひとつへ取り組み達成状況を評価して行くのがSDGsの本来的な目的ではないことを伝えながら、これだけのGoalに向けての現状の課題解決にシナジーを発揮しながら連動・連携して繋がる「廃棄の最適化」に“一点突破 全面展開”で取り組みましょうと告げて回ることがJFLの今の役割になっています。もはや、フードバンクがよく分からないとかの問題は吹っ飛んでいます。なぜなら、「SDGsに取り組まない企業は滅びる」時代が到来したからです。
ジャパン・フードバンク・リンクの新たなビジョンと役割とは
冒頭で、JFLはその目的として、食品ロス削減のために、リユース・リサイクル・リボーンを推進することを挙げたと書きましたが、これら全てを推進すること=SDGsの全17のうちの14のGoalに向かうこと!!に昨年末に気付きました。そして、そのために必要とされるのが、創造性の発揮であり、イノベーションです。IoT、ICT、IT、RPA、AIといった技術がそれを助け、支えます。そうしたことから、JFLは立ち上げた時から、小さいながらも以下のイノベーションをフードロス削減、食による要支援生活者支援の世界に持ち込むべく、様々な企業との間で情報交換を行って来ました。
- IoTを使った新たな食品ロス削減システム(賞味期限が間近に迫った商品をスーパーの店頭で購入すると自動的にそのスーパーでの買い物ポイントがスマホに付与される等)の開発
- 寄贈される食糧・商品が増える新たな仕組み(エコプラザ、フードマイレージ等)の開発
- 寄贈された食糧・商品を有効活用する新たな仕組み(無料スーパー、技能実習生の食による支援等)の開発
「SDGs」の開発の発想は、世界的な17の課題解決(Goal)に民間の持つ創造性とイノベーションを持ち込むことです。
それからもうひとつ、JFLとしてここまでの『ハローズ方式』であり、『岡山モデル』であり、新たなフードバンク活動推進団体の編成・養成と言った食品ロス削減の活動を続ける中で、大きな課題に気が付きました。
それは、経営トップの意識変革は言うまでもありませんが、活動に取り組む現場の方々の活動のGoalに対する腹落ちです。『ハローズ方式』も実は、店長の意識レベル、取り組みのGoalの捉え方の違いで、店舗から提供される食糧・商品の量に雲泥の差がありました。全てトップレベルの店舗並の食糧・商品が出てくれば、恐らく全体でも倍増します。また、フードバンク側で活動に取り組む現場の方々の意識、目的、Goalの捉え方にも大きな差を感じました。こうした現場の知識不足、情報不足からは、『ハローズ方式』等の創造性やイノベーションは決して生まれません。食品ロス削減であり、要支援生活者の食による支援の持続可能な推進のためには、この2つをSDGsの14のGoalに紐づけ、そこに、創造性とイノベーションを持ち込み、課題の解決を図る、「SDGs」の何たるかを正しく理解し、「SDGs」のGoalに向けての課題解決の中に、この2つん課題を位置づけ、解決の方向に正しい一歩を踏み出せる教育・研修を通じての人材の養成が新たにJFLの課題として浮かび上がって来たのです。
「フードバンク」から「SDGsバンク」への新たな旅立ち
今夏に向けて、一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンクは、発展的にその名称を一般社団法人ジャパンSDGsバンクに変更します。「バンク」には、SDGsのGoalに向けての智慧の豊かな蓄積、発信基地へのバージョンアップの意味を込めています。そしてその中で「SDGs」は企業の新たなビジョンであり哲学(フィロソフィー)創りの最善の道具であり、そのGoalへ向けての取り組みが企業収益に結び付いてこその価値であることを現場に伝え、やがてそのプランニング、コディネート、戦略立案が出来る人材の養成と、更にはそのマーカーとしての『SDGsビジネスマイスター総合検定』(2020年春)を主宰します。引き続き、食品ロス削減には、一般社団法人ジャパンSDGsバンク内のジャパン・フードバンク・リンクにて取り組んで行きます。現在、『ハローズモデル』『岡山モデル』に次ぐ、第三、第四のモデルを準備中です。
以上
2019年3月16日
一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンク
(改予定:一般社団法人ジャパンSDGsバンク)
理事長 村井 哲之