今年4月に再エネ賦課金の増額が、先月9月27日に11月の燃料費調整額の増加が発表されています。「せっかく省エネをしたり電力会社と交渉をして単価を下げたのに、電気料金が全然下がらない!」…そんな声をうけて、本記事では電気料金上昇の要因となっている3つの要素「再生可能エネルギー促進賦課金」「地球温暖化対策のための税」「燃料費調整額」について解説し、どうやって電気料金を下げていけばよいか、計算をしながら考えていきます。
まず2017年11月と2018年11月の比較をすると、再生可能エネルギー発電促進賦課金(グラフでは「再エネ促進賦課金」)が2.64円から2.90円へ0.26円/kWh増加、燃料費調整額が-0.85円から0.60円へ1.45円/kWh増加し、合計では1.71円/kWh増加しています。[図1]
[図1]中国電力、環境省、経済産業省の発表情報より当社が作成
電気料金への影響額は?
電気料金は下記の式で計算できるので、
電気料金=
(基本料金単価×契約電力×(185-力率)/100)
+(電力量単価×電気使用量)±(燃料費調整単価×電気使用量)
+(再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×電気使用量)
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契約電力300kW、月間電力使用量120,000kWh、力率100%、基本料金単価1,220.4円/kW、電力量単価13.37円/kWhで試算をすると、
2017年11月の電気料金=
(1,220.4円/kW×300kW×(185-100)/100)
+(13.37円/kWh×120,000kWh)+(-0.85円/kWh×120,000kWh)
+(2.64円/kWh×120,000kWh)
= 2,130,402円
2018年11月の電気料金=
(1,220.4円/kW×300kW×(185-100)/100)
+(13.37円/kWh×120,000kWh)+(0.60円/kWh×120,000kWh)
+(2.90円/kWh×120,000kWh)
=2,335,602円
電気料金はなんと205,200円(前年比109.6%)もの増額となります。
それでは、電気料金上昇の要因となっている3つの要素「再生可能エネルギー促進賦課金」、「地球温暖化対策のための税」、「燃料費調整額」について細かく見ていきましょう。
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは?
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再生可能エネルギー特別措置法)により、2012年7月に定められた制度です。その前身となったのは太陽光発電促進付加金で、こちらは2014年9月に終了し、再エネ促進賦課金へと一本化されました。
2013年に環境省が発表した再エネ促進賦課金の高位の予想を超え上昇しています。[図2]この上昇は2020年まで続きますが、それ以降は住宅用太陽光発電の調達期間が10年で終了のため、緩やかに下降します。さらに住宅用太陽光発電以外の区分では調達期間が20年で終了のため、2030年以降は急激に減少していきます。
[図2]2030年までのFIT利用の再エネ導入量に対する賦課金単価
2018年現在、まだ賦課金単価のピークは来ていないということです。
地球温暖化対策のための税とは?
地球温暖化の大きな原因となっている温室効果ガス。その大部分を占めるのは、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料をエネルギーとして使うときに排出される二酸化炭素(CO2)です。地球温暖化対策税は、火力発電や自動車の走行など、化石燃料からエネルギーを生み出すときに排出されるCO2を抑制し、地球温暖化対策を強化することを目的に2012年10月1日から導入されています。
「地球温暖化対策税」は、原油・石油製品(ガソリン、灯油など)、ガス状炭化水素(天然ガス、液体石油ガス)、石炭といったすべての化石燃料に対し、それぞれCO2排出量に応じて税率を上乗せするというものです。
地球温暖化対策税は電力量単価に内包されています。
地球温暖化対策税による税収の主な使い道は下記の通り。エネルギー起源のCO2削減対策に効果のある幅広い分野への対策に活用されています。
- 省エネルギーの抜本強化・導入支援
- 再生可能エネルギーの大幅導入
- 分散型エネルギーの促進
- 革新的技術の開発・普及促進
2015年12月1日には経済産業省が、東京電力、北陸電力、中国電力及び沖縄電力から地球温暖化対策税の税率引き上げに伴う、電気事業法第19条第7項の規定に基づく供給約款の変更届を受理したことを発表しました。
税率の引き上げによる燃料価格の上昇分を電気料金に反映させるというものです。
各種料金の変更は、東京電力、北陸電力及び中国電力では2016年6月1日から、沖縄電力では2016年8月1日から適用されました。
参考:
燃料費調整額とは?
電力会社が発電に使う燃料費はコストの約42%を占め、輸入燃料の国際価格の上下は電力の安定供給に影響を与えかねません。この負担を調整するため、燃料費調整制度が1996年から導入されました。燃料費調整制度は、石油、石炭、液化天然ガス(LNG)燃料の輸入価格および為替の影響を電気料金に反映させるもので、国内資源である水力発電や再生可能エネルギーによる発電には適用されません。
関連記事電気代のしくみを知ろう。電気代に含まれる燃料費調整額って?
再エネ促進賦課金と違い、電力会社の電源構成によって使用される燃料の割合は違うため、全国の電力会社で一律ではありません。
原油価格はしばらく堅調な見通しですが、アメリカのイラン制裁による供給不安の影響が出る可能性もあります。
参考:
どうすれば電気料金を下げられる?
ここまで電気料金の上昇要因について見てきました。では、前年比で料金をキープ、または下げていくためにはどうすればよいでしょうか。最初に出てきた式で考えてみましょう。
電気料金=
(①基本料金単価×③契約電力×(185-④力率)/100)
+(②電力量単価×⑥電気使用量)±(燃料費調整単価×⑥電気使用量)
+(⑤再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×⑥電気使用量)
- 電力会社と交渉し、基本料金単価(①)、電力量単価(②)を下げる
- デマンドを抑え、契約電力(③)を下げる
- 高圧受変電設備の設備更新をし、力率(④)を改善し割引率を上げる
- 賦課⾦減免制度の認定を受け、再エネ促進賦課金(⑤)の負担を減らす
- 省エネ、設備更新、自家消費型太陽光の導入等により電気使用量(⑥)を下げる。電力量料金、燃料費調整額、再エネ促進賦課金の3つを同時に減らすことができる
5については再エネ促進賦課金の増加やFIT制度の終焉を前に自家消費型太陽光へ注目が集まっており、また多発している自然災害から独立電源を確保しBCP対策としたい事業者も多く、当社にも効果やメンテナンスについてよくご相談をいただきます。