省エネ対策検討、省エネ効果測定、電力会社選定などに際して、電気料金計算は必須です。しかし、初心者にとってこの計算は複雑で意外に難しいもの。そこで、初心者でも難なく電気料金の計算ができる秘訣を紹介します。
電気料金の内訳
電気料金は「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の3つで構成されています。3つの違いは次の通りです。
1:基本料金
低圧は電気使用量に関係なく、一律に設定されている料金です。例えば東京電力を始めとする一般電気事業者(大手電力会社)の場合は、契約アンペアにより基本料金を設定しています。
対して高圧はデマンド制または協議制であり、需要に応じて決定します。その際の算式は「基本料金[円]=基本料金単価[円/kW]×契約電力[kW]×(185-力率)/100」です。(※一部例外があります)
2:電力量料金
1kWh当たりの「電力量単価」に電気使用量を掛けた額と「燃料費調整額」の合計で設定されている料金です。
算式は「電力量料金[円]=(電力量単価[円/kWh]×電気使用量[kWh])±(燃料費調整単価[円/kWh]×電気使用量[kWh])」となります。
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3:再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギーの普及を促進するための利用者負担金です。負担金は毎年見直されています。
算式は「再生可能エネルギー発電促進賦課金[円]=再生可能エネルギー発電促進賦課金単価[円/kWh]×電気使用量[kWh]」となります。
まとめると、
電気代=
(基本料金単価×契約電力×(185-力率)/100)
+(電力量単価×電気使用量)±(燃料費調整単価×電気使用量)
+(再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×電気使用量)
となります。
消費電力の計算法
省エネ対策の検討、省エネ効果測定、省エネ補助金申請などを行う場合は、社内の電気設備・機器の「消費電力」をまず把握する必要があります。
消費電力とは電気設備・機器を稼働するために使った電力量のことで、「定格消費電力」「年間消費電力」「力率」の3つで構成されています。3つの違いは次の通りです。
1:定格消費電力[W]
定格消費電力[W]に時間[h]をかけたものが、電気設備・機器の1時間当たり最大電力消費量[Wh]です。
定格消費電力は「指定された条件下での安全な範囲内の最大出力」を示したものです。このため、定格消費電力は設備・機器の最大電力消費量の90%程度になるように設定されています。設備・機器をフル稼働させた場合も、ブレーカー容量を超過しないようにするための予防措置です。
2:年間消費電力[W]
電気設備・機器を「実際の使用状況に近い条件下で1年間に消費する電力量の測定基準」を示したものです。年間の電気料金を見積もる際の目安となる、便利な指標といえます。
3:力率[%]
電力を供給した際の電流の損失率を示す指標です。
例えば、多くの照明は電流損失が発生しないので、力率は100%になることがほとんどです。(実際に計測すると若干ブレます)
電流計等で測定しないと正確な力率はわかりませんが、電気設備・機器の力率は平均80%程度とされています。
力率は事業所で使用している高圧の電気設備・機器の電気料金に大きく影響する指標なので、力率の把握は重要です。
なお、電気設備・機器の消費電力を見積もる際の算式は「電圧[V]×電流[A]×力率[%]」となります。
事業所の消費電力の特徴
前節で述べた消費電力には、実は「有効電力」「無効電力」「皮相電力」の3種類があります。これらの違いは次の通りです。
有効電力
有効電力は「W」の単位で示され、電気設備・機器で実際に消費された電力のことです。
無効電力
「Var(バール)」の単位で示される無効電力は、電力会社が供給した電力のうち電気設備・機器で消費されなかった電力のことです。
電気設備・機器の電気回路の大半はコイル(電流により形成される磁場にエネルギーを蓄える受動素子)が用いられています。これがネックとなり、電力を供給した際に供給分と消費分のギャップが発生します。このギャップを埋めるために供給する電力が無効電力になります。
高圧電力を使用する電気設備・機器を多数設置している事業所の場合、無効電力は電気料金高騰要因のひとつになります。したがって、無効電力を極小化するためには、進相コンデンサを電気設備・機器に取り付ける等の節電対策が重要になります。
皮相電力
「VA(ボルトアンペア)」の単位で示される皮相電力は、電力会社側から供給する消費電力のことで、需要側からは有効電力と無効電力の合計消費電力になります。
発電機や変圧器の電源性能は皮相電力で表し、社内に自家発電機や変圧器を設置する場合、電気設備・機器の過負荷運転(無効電力を上回る電力消費による停電)防止の目安になります。
省エネ対策に向けた市販消費電力計測器導入の留意点とは?
現在、省エネ対策を実施するため、消費電力を計測できる各種市販計測器を導入する企業が増えているようです。
市販の計測器も、
- 消費電力を数字やグラフで表示する可視化機能
- 消費電力を電気料金に換算する電気料金自動算出機能
- 消費電力が多い時間帯や機器を特定できる消費電力分析機能
――などを標準搭載している製品が多いので、上記の「自動算出機能で計算された電気料金=電気事業者の電気料金請求額」と勘違いしやすいですよね。
しかし、実際に請求される電気料金には燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金が加算または減算されているので計測器とは差が出ることに注意が必要です。
以上、電気料金と消費電力のしくみをご説明しました。電気は身近なものでありながら知らないことも多いですよね。一度覚えると省エネ・節電・補助金申請・電力会社選定にと様々なシーンで使えますので、調達・開発・総務・経理の方には自社の電気料金請求書で電卓を叩いてみることをオススメします♪
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