ESG投資とは
ESG投資と呼ばれる投資の形態をご存知でしょうか。ESG投資は欧州発祥のシステムとされ、現在では欧米を中心に国際的に注目を集めている投資の形態です。
具体的には、投資対象となる企業を評価する際に、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を最も重視して投資対象を決める投資方法のことを指します。ESGはその英語の頭文字を取った名称です。
ESG 投資が始まったきっかけは、国連が2006年に、機関投資家に「責任のある投資」を呼びかけたことがあります。この責任のある投資を実現するものがESG投資であり、世界的な潮流もあってESG投資のトータル運用額はこの5年間で2倍に急増しています。
その額は日本円でおよそ2,500兆円と、世界全体の投資の4分の1を占めるまでに急拡大しています。
ESG投資が今注目されている理由
なぜいまESG 投資が注目されているのでしょうか?大きなきっかけは、SDGsおよびパリ協定の採択にあります。
SDGsとは、国連が2015年9月に採択した「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のことで、2030年までに世界全体で達成するべき持続可能な開発のための17のゴールを示したものです。
もう1つのパリ協定は、2015年12月12日にパリで採択された、気候変動の抑制に関する多国間の国際的な協定になります。
これら2つに代表されるグローバルな枠組みのもとでの、持続可能な社会づくりを目標とする多国間の共通目標の採択により、ESG投資の熱は飛躍的に高まりました。
地球規模で地球環境の問題、貧富の格差の拡大、グローバル化にともなう企業経営の移り変わりといった様々な課題に直面する中、企業への投資は長期的な目線で持続可能な社会づくりに貢献するべきとする世界的な潮流が投資家の心を動かしたからです。
従来であれば、企業の業績や、新しいテクノロジーといったもののみが投資の世界で注目されていましたが、今後はさらにESGをしっかり取り組む企業運営が求められるでしょう。
ESG投資が求めているもの
ここからは、地球規模の大きな問題を解決していく1つの手法と期待されているESG投資が着目している、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つについて解説していきます。
E(環境:Environment)が着目するもの
Eが着目するものを具体的に挙げると、
- 地球温暖化への対策
- 生物多様性の保護
- 資源や産業廃棄物の適切な管理
といったものになります。
再生可能エネルギーを利用する脱炭素化社会の実現などに向け、こうした地球環境に配慮した持続可能な企業運営を率先して行う企業を、ESG投資では優先的な投資対象とします。
S(社会:Social)が着目するもの
Sが着目するものを具体的に挙げると、
- 労働者の人権への配慮
- 従業員の安全管理
- 職場の衛生管理
- 製品やサービスの安全管理
といったものになります。
特に、途上国の安い労働力を用いて製品作りを行う企業を投資対象とする場合、上記が適切になされているかを判断の材料として優先的に扱います。
G(企業統治:Governance)が求めるもの
Gが着目するものを具体的に挙げると、
- 企業取締役の構成が適切か
- 公正な競争がなされているか
- 汚職がないか
- ちゃんと法律を守っているか
- きちんとした情報の開示があるか
といったものになります。
こちらは、企業が取り組む事業運営の内容を見るものではなく、取締役などの企業の経営陣がしっかりと効率的な経営や、労働環境への配慮を行っているかどうかを投資の判断材料とします。
これらは、企業による不正が発覚した時など、想定外の株式投資の損失リスクを小さくすることを目的とします。
今後はESGの課題をクリアできない企業は投資対象から外れる?
もはやESG投資の流れは世界的な潮流となっており、今後さらにこの流れは加速していくでしょう。つまり、今後はESGの課題をクリアできない企業は、投資を受けられなくなるリスクを背負うことになります。
Eの部門(環境問題)を例に挙げるとすれば、既にイギリスやフランスといったヨーロッパ諸国の多くで、2030年・2040年以降にガソリン車やディーゼル社の販売を禁止する方針を決めています。
既に、風力や水力、太陽光などの再生エネルギーの発電コストは、化石燃料によるものと差が縮まりつつあり、多くの企業において、ビジネスモデルの転換期は喫緊の課題となっています。
ESG投資の波は日本にも来ている
欧米からは多少遅れをとっていますが、近年は日本にもESG投資の波が来ています。日本で開かれるESG投資のセミナーには、多くの企業関係者が押し寄せているからです。
その理由は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせ、様々な日本企業が海外からの投資を受けるために、ESG投資の概念を学ぶ必要があるからです。
日本では特に、「長時間労働」や「外国人労働者の人権問題」などの課題があります。
もはや、世界中のESG投資家が日本企業を監視していると言っても過言ではありません。
まとめ
ESG投資の概念は欧米から始まり、今や世界の潮流となりつつあります。今後は一層ESG投資の動きが加速していくのは確実であり、日本も例外ではありません。
公的年金の積立金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、今後、ESG投資を積極的に進めると表明しており、既に1兆円規模で資金の運用を開始しています。GPIFは世界一の公的年金機関であるため、この動きが大きなインパクトを与えるのは確実です。
今後は日本においても、企業規模によらず株主や企業によるESG投資を意識した経営努力が必要となっていくでしょう。