設備を計画的にメンテナンスするということは、どのような意味をもち、どのように生産性へつながっていくのでしょうか。設備メンテナンスという用語の意味を振り返りながら、設備メンテナンスの重要性と、生産性との関わりを解説します。
設備メンテナンスとは
最初に、「設備メンテナンス」の意味と、その業務内容について確認します。
設備とは
設備とは、生産活動やサービスの提供のために、システムを構成する能力要素としての物的手段の総称です。これには機械、装置、工具類、計器類、さらには土地、建物も含まれる場合もあります。
このことから、設備メンテナンスが作業の効率維持を助けるだけの手段ではないとわかります。経営資源、つまりファシリティとして見た設備の価値を維持する手段でもあるのです。
メンテナンスとは
メンテナンスと似た意味の言葉に、保守と保全があります。
保守とは、正常な状態を保つこと。保全とは、保護して安全であるようにすること、とされています。またメンテナンスは、保守・点検作業のこと、とされています。
このような違い、使い分けがある3つの言葉ですが、実際には明確な違いはありません。一連の作業の担当になった場合も、職務内容としてはほぼ同じであるといえます。
大抵は保守・保全をひっくるめてメンテナンスと呼ぶことが多いのです。
設備メンテナンスの3つのプロセス
1つの設備に関して考えたとき、設備メンテナンスは3つのプロセスに分けて考えることができます。
- 修理
設備にトラブルが発生したときに行う修復活動のことです。事後保全と呼ばれることもあります。しかし事後となってしまうため、部品調達に時間を要することもあり、復旧に対して時間と突発的な費用がかかります。 - 定期メンテナンス
一定期間ごとに行う点検作業のことです。時間基準保全と呼ばれることもあります。メンテナンス計画があらかじめ立てやすいというメリットがある反面、多くの場合は決められた項目に対してのみ行うため、すべての異常を発見できるわけではありません。 - 予防メンテナンス
設備の安全稼働のために行う予防活動のことです。部品がどれくらい劣化しているかを調べ、交換が必要な部分に対してのみ措置を行う方法です。必要な部品のみを事前調達してから交換するため、時間と費用を少なく抑えることが可能です。ただし、点検箇所や部品寿命の見極めについて、スキルが必要とされ、作業者の負担が大きくなります。
上記のうち修理の占める割合を最小限にするのが理想です。しかし、設備や工程が複雑になればなるほど、定期メンテナンスや予防メンテナンスでは見つけられない要因による故障が発生します。実際の現場では、定期メンテナンスと予防メンテナンスからこぼれ落ちた部分を、修理という形ですくい上げる手法を取ることになります。
したがって、上記の3つのプロセスについて、より適切な設備メンテナンス計画を立てることが必要となります。そのことにより、次のようなメリットが生まれます。
- 異常箇所の早期発見
主に定期メンテナンスにより発見されることになります。早期発見することで突発修理を減らし、工程への影響を最小限にし、予算計画が立てやすくなります。 - 予備部品在庫の適正化
定期メンテナンス・予防メンテナンスにより、突発的な故障に備え大量の部品を準備する必要をなくします。 - メンテナンスコストの低減
ムダな部品在庫を削減するほか、計画的なメンテナンスにより修理箇所・修理方法を早く特定することができコスト低減につながります。 - 設備の耐用年数延長
定期メンテナンスによる給油や、すでに締結されているボルトやナットをさらに締め込む増し締めなどの基本メンテナンスに加え、予防メンテナンスにより周辺部品や付帯設備への損傷も防ぐことで、設備の耐久性を維持できます。 - 不良率の削減
設備を適切にメンテナンスし最良状態での稼働を維持することにより、設備・機械要因による不良発生を防ぐことができます。
設備メンテナンスが支える経営資源のマネジメント
このように設備メンテナンスとその適切な計画は、全てダウンタイムの最小化を目指すという目的につながります。そしてダウンタイムの最小化こそが、生産性を維持する最も有効な手段であり、設備メンテナンスは生産性を保全しているともいえます。
また、設備という経営資源を保守することで、労働者の安全性確保にもつながります。長じて、製品の不良率削減などコスト面でのメリットもあることから、設備メンテナンスは、経営資源のマネジメントを支えています。
設備のメンテナンスは生産性を保全するということ
設備をメンテナンスすることはどのようなことかを考えました。設備メンテナンスを3つのプロセスに分けて考え、それらを計画的に組み合わせることによって、どのようなさまざまな効果が生まれます。
このように設備をメンテナンスするということは、1つの設備を保守するというだけではなく、生産拠点の資産価値を維持し、生産性を保全していくことでもあるのです。
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